誘惑してミル?

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思い起こせば一年前……。 桜舞い散る入学式で、体育館のステージに上がって入学生代表の挨拶を述べる彼の、その颯爽と優美な立ち振舞いを見てからというもの……。 あたし、牛久保ミル(ぎゅうくぼミル)の心は……宗夫くんにゾッコンだった。 一年間、休み時間の度に彼の教室へと足繁く通って、でも近づくこともできずに、ただ廊下の窓にへばりついて見つめ続けた日々。 お昼休みにこっそり彼の後をつけて、宗夫くんが頼んだ学食と同じメニューを注文した毎日。 あなたの姿を見るだけで。 あなたの声を聞くだけで。 ふわふわと心が浮き立って、幸せだった。 それが、この春のクラス替えで。 あたしの祈りが天に届いたのか。 念願の宗夫くんと、同じクラスになってしまったのだ!! もう、あたしの頭の中は、完全に一面お花畑になった。 宗夫くんとおはようの挨拶を交わしては、新しい蕾をつけて……。 宗夫くんにプリントを渡しては、何枚もの花弁を開かせた。 そして、咲いて咲いて満開になって……。 調子づいたあたしは遂に、一年間したためた想いを、彼に伝える覚悟を決めたんだ!! …………なのに。
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