21人が本棚に入れています
本棚に追加
ズーンと沈み込むあたしの頬を、麗らかな春の風がそっと霞め去っていく。
その風に乗って校庭から響いてくる、体育の授業を受ける生徒たちの声援とホイッスル。
重い体を動かして、屋上の端っこの手摺まで移動すると、目下に広がる運動場。
少し目を凝らして、その小さな人溜まりを一塊ずつ注視していくと、うち一人に自分の視線が釘付けになった。
さらさらの黒髪にダークブラウンの眼鏡。
宗夫くんだ。
「まぁ、許してよ。こうして一限目のサボリにつきあってんだからさ。」
あたしの真横に並んだ後、手摺に両手を組み置き、その上に顎を乗っけて軽い調子で許しを乞うヒンちゃん。
それをすっぱりと無視して、体育の授業を真面目に受ける宗夫くんを眺め続ける。
一年間追い続けた彼の姿。
その長い片想いが、とうとう終わりを迎えてしまった今朝のあの光景を思い出して……。
切なさに涙が滲んだ。
そのまま暗いオーラを纏わせて、完全に沈黙していると、あたしの負の連鎖を断ち切るように、バシンと背中を叩くヒンちゃん。
「痛っったーーーーい!!」
多少大袈裟に悲鳴を上げると、あたしのしつこい落ち込み具合にいい加減苛ついている様子のヒンちゃんが、説教じみた眼差しを向けてきた。
最初のコメントを投稿しよう!