第1章   相当な事実

6/10
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
だけど、そんなことが続くはずないのだ。 次第にそれはエスカレートしていった。 いわゆる、泥沼というやつだ。 お客さんのお金に手を付ける金額は みるみるうちに増えていき、 ついには親御さんのところへ泣きついて行っても もうどうにもならないところまできてしまったのだ。 そして、迎えたのが今日という日だったのである。 恐ろしいことに、親御さんは息子可愛さに 極限までお金の工面をつけてきたようだ。 おそらく、 「今日子には絶対内緒にしてくれ、 今日子にバレれば離婚になってしまう」 とか、 「そのうち俺がなんとかするから、 もう1回だけお願いできないか」 などと言って泣きついていたのだろう。 そんなことは容易に想像できる。 そして親はそんな息子の 泣き落としの言葉に負けてしまって、 ズルズルと今日まで来てしまったのだ。 もう後の祭りではあるのだけれど、 もし親御さんがそこでお金を工面しなければ、 途中ででも突き放してくれれば、 あるいは、妹の今日子に打ち明けてくれていれば、 と思うにきりがなかった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!