第1章   相当な事実

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詳しい話の内容はこうだった。 直也さんの横領を妹が知ったのは 私に連絡してきた直前だというのだ。 それまで、直也さんは妹には隠しに隠していたようである。 会社のお金を遣い始めたのは2年くらい前から。 最初は少額だったそうだ。 営業マンは確かに数字の世界かも知れない。 個々に課せられた売り上げ目標というものがあるだろう。 直也さんは、自分の売り上げ目標を達成するために、 例えば5万円のところをお客さんが4万円ならOK という条件を出してきた場合、その1万円の穴埋めを 自分がしていたというのだった。 はじめはその穴埋めも 自分のお小遣いから賄っていたが、 だんだんとそれも出来なくなり、 ついにはお客さんから 集金したお金に手をつけてしまったというわけだ。 そして、最初の頃は手を付けてしまったお金のことが バレる前に、家からほど近い自分の両親のところへ お金を借りに行っては穴埋めをし、 何事もなかったかのような 巧作をしていたらしい。 不謹慎な言い方だが、 そこら辺の知恵は回るようだ。 凡人には理解しがたい知恵の使い方だと思った。
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