第1章   弟の都合

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それは弟からの電話だった。 今度は弟が話があるという。 「もう今日はヘトヘトだから、 今度にしてもらえないだろうか」 と言いたいところをなんとか堪えて、 「どうしたの? なんかあった?」 と言うのであった。 もしも何か急な変更でもあったかもしれないからだ。 この臆病で心配性な私の性分、 なんとかならないものかと我ながらに思う。 弟はできれば早いうちに、 つまりこれからということなのだが、 自分の話を聞いてもらえないかと言う。 夫には申し訳なかったが、 ほんの10分でいいからという弟の押しに負けて 仕方なく承諾したものの 私はなだれ込むようにソファに座った。 なんせ、 今日一日、 わずかな見落としも 少しの脇の甘さも許されないとばかりに 頭をフル回転させていたのである。 それはもう限界なのであった。
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