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 理空は、目の前で乱入者が先生と熱を上げて討論しているというときに、心ここにあらずという状態で、流堂の不可思議な行いのことを熟考していた。  そのうちに、考えすぎて思考が停滞した理空が、ふと顔を上げると、その視界に、俯いた先生の顔が映った。  そしてすぐ、彼女の耳に、乱入者の残念そうな声が届く。 「………… ――『世の中は勉強』『勉強がすべて』、なんて詭弁ばかり振り撒いて、結局は、大した目標もゴールも用意されていなく、ただそう生徒たちを煽って、自分の利益のためだけに勉強させようとしているだけ。そんなくだらないことのために、そういうことをほざき散らす先生がいるせいで、俺みたいなやつが生まれるんだよっ! 俺みたいに、勉強しか能がない、空っぽな奴が生まれるんだよっ! ……」  勉強しか能がない、空っぽなやつ?  理空は表情を曇らせる。  乱入者から、ナイフを強く握り直した後で吐き捨てられた、憎々しげな文句が、次にそんな彼女の耳に入った。 「勉強のせいで、学生時代に【青春】なんて、微塵も感じられなかった! ――一部の隙もなかった勉強漬けの生活の中で、【青春】を感じられるような、楽しいことなんて何一つなかったんだよっ! ――それも全部、お前らみたいな戯言を押し付ける先生がいるからだっ!」  理空は、それを聞いて訝しげに表情を歪めた。  学生時代に【青春】なんて微塵も感じられなかった?  勉強漬けの生活で、【青春】を感じられるような楽しいことが、何一つなかった?  そんなこと……、そんなこと……。  乱入者はナイフを体の前に掲げ、静かに先生の方に一歩、また一歩と、ナイフを微々に震わせながら近づいた。  それに気が付いた理空は、反射的に立ち上がり、乱入者に向かって叫んでいだ。 「――――待って! そんなこと、絶対にあるわけがないよっ!」
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