第1章    疑心暗鬼

2/8
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
私は母と二人で出掛けたことがほとんどない。 振り返れば、 母から誘われて近くに買い物などには 行ったことはあるが、 それもほんの数回のことだ。 母は私を誘ってはくれない。 そしてまた、 私も母を誘うことはしないのである。 いや、 私は断られるのが怖くて、 誘えないのである。 気軽に、 「ねぇ、 お母さん、 ちょっと買い物に行かないっ!?」 と誘えない。 こんな軽い口調で誘えないのだ。 母から「えっ!?」という、 驚くような、 戸惑うような、 あるいは困ったような、 そんな 「どうしようかな」というような反応をされることが怖いのである。 これが私と母との間にある空気だ。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!