戦友という名の同僚

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なぜなら、“戦友”としての立場を失いたくなかったからです。告白して恋人に立候補しようと何度も考えました。バレンタインデーに他の女の子からチョコをもらっている大島を見かけては、私も……と考えたり、社員旅行で大島にべったりとくっつく後輩を見かけては、わざと大島を大声で呼びつけて引き離しにかかったりと、毎日のようにやきもきしていました。でも、“告白して振られたら、友達ではいられなくなる……”、そう思うと一歩が出せませんでした。 こんな私でも少しはアプローチしたんですよ? 大島の誕生日にはプレゼントを贈ったり、クリスマスの夜に食事に誘ったり。バレンタインには“友チョコが余ったから”と嘘を付いて手作りチョコを渡したりしました。そのたびに大島は快く受けとったり食事に付き合ってくれたりしました。ひょっとしたら大島は私に気があるのかもしれない、そんなことが頭を掠めました。 いつか時期が来たら、戦友ではなく恋人として付き合える日が来るんじゃないか、とちょっぴり期待もしていたのです。 大島を好きになって2年。私も27になりました。私もとうとうリーダーという役職をいただき、初めての部下が出来ました。2つ下の後輩2人と、新入社員の女の子。田中桜さん……桜ちゃんと呼んでます。桜ちゃんは専門学校卒の二十歳で、声も小さくカヨワイ雰囲気の女の子でした。でも身嗜みも受け答えはキチンとしていて、でしゃばらないけれど言われたことはキチンとこなす真面目な子。私はそんなカヨワイ女の子を守るべく、手取り足取り仕事や仕事以外のノウハウも教えていきました。初めての部下の面倒を見ていたのです。 半年程したある日、私はいつものように大島を誘って社員食堂に行きました。2人で行列に並び、カウンターの日替わりプレートをトレーに乗せてテーブルに着きました。 「ん、あれ? 桜ちゃん?」 行列の後ろの方に桜ちゃんが並んでいました。いつもはお弁当の彼女が社員食堂にいるのは珍しい……いえ、彼女をここで見たのは初めてのことでした。慣れない手付きでプレートを取り、会計をしています。空いた席を見つけられずに右往左往している桜ちゃんに手を振っておいでおいでと手招きをしました。ほっとしたのか可愛く笑って私のところにやってきました。 「相席いいんですか?」 「もちろん。桜ちゃん座って」 「でも。おふたりの邪魔じゃないですか?」
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