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翌日、出勤して、同僚に大島と桜ちゃんのことをそれとなく聞きました。2人はつい先月から付き合い始めたらしいと教えてくれました。そして総務課に結婚するにあたりの申請書類を昼休みに2人で取りに行ったという噂も……。私だけが何も知らずにいました。井の中の蛙、でしょうか。その後の納会は階ごとに行われましたが、ひょっこり大島は現れて、桜ちゃんと2人で並んで皆に、年明けに入籍する予定だ、と報告しました。会場は拍手の嵐。一気に盛り上がりました。皆の祝福を受け、真っ赤になった大島と俯く桜ちゃんを尻目に、私はこっそりと納会を抜け出しました。本当は私があそこにいるはずだったのに……。
そして翌日。私は始発の新幹線に乗り込み、実家へと向かいました。流れる車窓は冬木立の物悲しい景色、自分の心を映したかのようでした。田舎でゆっくりして心を癒やそう、そう自分を慰めながら私はボンヤリと新幹線が目的の駅に到着するのを待っていました。
その田舎で待ち受けていたのは、そのお隣瀬沼さんの息子、幼なじみの裕太でした。
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