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「え、だってそれはほら、十子ちゃんにはこれからあちこち回ってみんなのご機嫌伺いしてもらわないと。」
「は?」
ご機嫌伺いが仕事だと?
十子さんの顔に、わかりやすく書かれたその疑問。
「だって、これだけの人手で交通量も多いし、トラブルにも備えて警察から人を出してもらってるじゃない。十子ちゃんの幼なじみの、ええと、利永くん?県警入りして出世したし、今回のこと、かなり無理をお願いしちゃったからねえ。」
「そんなもの、それが仕事だ。正式に依頼が行ったのならば、公務員として警察官も己の責務を忠実に果たすまでのこと。」
しかし、鈴木は知っている。
十子さんの幼なじみの利永は、次期副本部長と言われる一見強面の堂々たる体躯の警察官ながらも、十子さんにはまったく頭があがらないのだということを。
今回の交通整理から警備巡回のことまで、かなり無理を押し通させてもらったし、そのために十子さんにも県警に赴いて会議に出席してもらった。
十子さんの顔を見るなり、利永は白旗全面降伏の体で、県庁側の依頼を引き受けたのである。
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