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始業式の日の午後。
瑠華は朝の出来事を引きずり、ずっと憂鬱な気分でいた。
三年生になったばかりというのに、初日から授業を聞かなければいけなかったこともまた、瑠華の不機嫌さを助長していた。
「瑠華、これから暇?」
同じクラスになった仲良しグループのメンバーから、いつものようにお誘いの声がかかる。
「あ、亜梨沙…。ちょっと聞きたいことあるんだけど…」
「えー? 何々? 何でも聞いてー」
質問されたことをすり替え、質問で返す瑠華に彼女は嬉しそうに近寄る。
見た目はギャルで大人っぽいけれど、人懐こくて明るい亜梨沙。
いつもクールで口数の少ない瑠華の言葉に、自分の話は放っておかれていることも気にせず目を輝かせた。
「あのさ…、うちのクラスの担任って…」
「え? 矢野ちゃんのこと?」
「矢野…ちゃん…?」
そのフレンドリーなニックネームと、亜梨沙のぱっと華やぐ表情に瑠華は朝のあの男の顔が頭に浮かび、眉間に皺を寄せる。
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