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「人聞きの悪い言い方をするんじゃねえ。
…ほら、これ」
「え…?」
彼は指先で摘まんだ何かを瑠華にわざとらしく見せた。
「…桜?」
それはたった一枚の桜の花びら。
「そ。お前の口についてたから、俺は親切にとってやっただけ。
感謝されても疑われる筋合いねえよ」
と、言いながら瑠華の隣に腰を下ろす彼。
「感謝って…。そんな大袈裟なことじゃなくない?
それに、屋上まで飛んで来るとも思わなかったし。
絶対、寝込みを襲われたんだと思った」
「お前…大人しそうに見えて自意識過剰だな。
誰がお前みたいなガキ襲うかって」
男は半笑いでポケットから煙草を取り出し、慣れた手つきでそれを口に加える。
一方、彼の言葉が面白くない瑠華は不機嫌に口を開いた。
「誰がガキよ…。
って言うか、あんた…誰?」
瑠華のその一言に男は盛大に煙草の煙をむせるように吐き出した。
「お前…俺を知らないのか?」
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