第1章

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『好きな子とのエッチは、気持ちよくなきゃ嘘やろう?』 いつか矢代に言われた言葉が脳裏をよぎる。 (気持ち良い、なんてレベルじゃ…ないよ。先生) 「楽人っ…」 好きだ。好きだ。好きだ。 「宗ちゃ…そう…ちゃ…あっ…んっ」 何度も出てしまいそうになる言葉をかみ殺し、その度に奥深くへと送った。伝えられない想いを、刻み込むように。そそぎ込むように。 「んっ…あぁ…宗ちゃん…」 「…なんだよ?」 「好き」 「っ…」 「大好き…宗ちゃん」 なんだって人が一番我慢していることを、こうもあっさりと口にしてくれるのか。宗助は舌打ちしたい気分になる。 「す…き…んぅ」 「わかったから…黙っとけ」 「ん…んん…」 キスで口を塞ぐ。こんな誤魔化しは好きじゃないけど。 (答えられないんだから…仕方ない) 「ごめんな。…楽人」 「あっ…やんっ…あぁっ」 「…んっ」 謝罪も問い詰められないように、手で誤魔化す。それでなくとも何もかも今日が初めての楽人は、何度目かわからない最後に、思考も体力も使い果たしていた。ぐったりと弛緩し、荒い息に白い胸を大きく上下させ、まどろんだ眼差しを向けてくる。 「大丈夫?」 「…ん」 「じゃあ、これで終わるよ…楽人」 「んっ…あっ…やっ」 「ん? いや?」 クスリと笑って動きを止める。まだ力を失うことのないそれの一番太い部分で止められ、めいっぱいに広がった入り口がヒクヒクと痙攣しているのが肌伝いで感じられた。 「はぁっ…やぁ…ん」 「どっちなんだよ? 楽人」 ぐぐっと押し入れると硬い感触が宗助の裏筋をなぞった。 「うっ…く…っ」 「あ…あぁ…ん」 (…傷跡が) 硬く腫れたままの傷跡が、宗助のそれを愛撫している。快感の誘惑に負けて少しだけ繰り返せば、優しくそこをなぞる一点に宗助は堪らない愉悦をおぼえた。 (俺のつけた傷跡。…俺の…罪) 「楽人…」 愛してる。 (ずっと…一緒に居たかったよ。お前と) 「宗…ちゃん?」 「怖く…なかったか?」 「全然。怖がってたのは、宗ちゃんのほうじゃない」 「…そう…だな」 今度こそ愛する人を失ってしまう気がしてた。それならそれで、いっそ踏ん切りがついて良いかとも思ったが…。 (良かった。楽人があの日のことを思い出さなくて) 「…良かった」 つい、ポロリと本音が漏れた。 「え?」 「良かったよ…楽人」
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