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委員長との雑談を終え、インカムのイヤホンに耳をすまし指示を待つ。
『あと数分で会長の挨拶が終わる。その後は各クラスが教室に戻るからその指示を頼む。全員配置につけ』
「了解」
インカムから流れた委員長の指示を聞きおわったと同時に配置場所に移動する。
恭弥の挨拶も順調に進み、入学式は問題なく終わりそうだ。
ふとステージに立つ恭弥に目をやる。
堂々とした姿勢で聞き取りやすい綺麗な声で挨拶をしていく彼には相変わらず見惚れてしまう。
(…まぁ…、そうでなくてもいつも見惚れてるけどな…)
我ながらよくこんなに長いこと片思いをいているな、と思う。
いつの間にか彼を好きになっていた自分はこれが恋だとは気づかなかった。
ただ友人や家族が好きなのと同じ感情を彼に持っていると思っていた。
違和感を感じたのが中学2年の時だったか。彼と距離が近すぎたり目があっただけですぐ顔が赤くなってしまい(といっても周りから見たらあまり変わりはなかったようだが)彼といるだけで緊張してしまい明らかに家族や友人の"それ"とは違うな、と思ったのがきっかけだった。
ふとした仕草にドキドキしてしまい気づいたら彼を目で追っていた。
そして気づいたのだ。
これが恋なのか、と。
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