第一章

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幼少期から恭弥はそうだった。 恭弥の家が大きな財閥でもあるから将来のために、と近づく奴が沢山いた。 媚を売る奴もいた。 そのせいで恭弥は絶対的な信頼を本当にごく一部のものにしか抱くことはなかった。 相手に警戒してか、笑顔もまったく見せなくなった。 普段からあまり笑わない恭弥がさらに笑顔を見せなくなったのだ。 そんな彼が、こんなにあっけなく初対面の人に笑顔を見せるなんて。 「……、んで…」 驚きが隠せない。 周りの悲鳴が遠くに聞こえる。 もしかして、と嫌な方向にしか考えがいかない。 『…ぃ、ぉぃ…おい!!聞こえるか!』 インカムから急に委員長の声が聞こえてやっと現実に戻る。 「はい、すいません。聞こえます」 『とりあえず入学式はこれで終了させる。お前ら風紀委員は各クラスを誘導させろ』 「はい、了解です」 とりあえず自分のことはおいといて先にやらなければいけないことに取り組まなければ。 深呼吸をして目の前にある仕事に俺は目を向けた。
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