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(早いな。もう来たのか…)
予約客が来たのだと思った俺は、
途中で引き返して店に顔を出す。
「いらっしゃいませ。ご予約されていた――」
俺は、途中で言葉を失った。
予定していた予約客は、
20代前半の女性だったはずだ。
しかし、今店に入って来たのはどこからどう見ても、
30代半ばのくたびれた格好をした男だった。
髪を好き放題に伸ばしていたのか癖のある髪が悪目立ちしている。
もちろん前髪が長くて顔なんか見えやしない。
その上、どこを歩いて来たのか分からないほどに服が汚れまくっていた。
「?…邦久…」
俺を後ろに庇った邦久が、その男と対峙する。
久保と接客中の客は、
突然のことに呆気に取られ動けないでいるようだ。
しかし俺は、入って来た男に違和感を覚えていた。
邦久の後ろからジッと男に目を凝らす。
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