第1話

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(早いな。もう来たのか…)  予約客が来たのだと思った俺は、 途中で引き返して店に顔を出す。 「いらっしゃいませ。ご予約されていた――」  俺は、途中で言葉を失った。  予定していた予約客は、 20代前半の女性だったはずだ。  しかし、今店に入って来たのはどこからどう見ても、 30代半ばのくたびれた格好をした男だった。  髪を好き放題に伸ばしていたのか癖のある髪が悪目立ちしている。  もちろん前髪が長くて顔なんか見えやしない。  その上、どこを歩いて来たのか分からないほどに服が汚れまくっていた。 「?…邦久…」  俺を後ろに庇った邦久が、その男と対峙する。  久保と接客中の客は、 突然のことに呆気に取られ動けないでいるようだ。  しかし俺は、入って来た男に違和感を覚えていた。  邦久の後ろからジッと男に目を凝らす。
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