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その答えを予想していたかのように、彼女は有頂天に言い返す。
「それならば、タダシが送る【青春】の終わりは、私が絶対に『こんな人生でよかった、こんな【青春】でよかった』と思えるような、【青春】を謳歌したようなものにしてあげる。だから、それまで、楽しみに待ってて」
それだけ、口説き文句を言い終えた理空は、落書き帳を閉じ、リビングテーブルから立ち上がると、空井正の元へと移動した。
布団で本格的に睡眠に入ろうとする彼を揺すって起こし、彼の幼児期の落書き帳を手渡しで返却する。
「タダシ! タダシの幼児期に使っていた自由帳、貸してくれてありがとう。――これ、返すね」
そう元気よく言って、落書き帳を渡す理空に対し、受け取った空井正は、少し気まずそうに指摘した。
「……ちなみに。ソラは『落書き帳』と『自由帳』を同じものだと思い込んでいるようだから、今のうちに指摘しておくけれども。本当は、両者は全く違うものだからな」
理空は、そのことを受けて、彼に苦笑いを浮かべた。
「…………え? ほんとに? うわっ、それは恥ずかしいかも…………」
そう言って、彼女は頬を染める。
そんな理空から返された、空井正の幼児期の落書き帳。
それには、最後のページにだけ、彼女によって、彩り豊かな絵が描かれていた。
雲がところどころに漂う、真っ青な空の背景のど真ん中に、どっしりと、その鮮やかさを主張して浮かぶ、太くて大きく、立派な――――虹の絵が。
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