~~ 9. 《続き》 ~~

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【青春】について、いろんな人に尋ねていた理由には、そういうことも含まれていたのか、と。  確かに、さっきの答えで納得できるものなのであれば、流堂のお友達や乱入者の話など、今までの説明でも充分に納得できたはずである。  しかしそれを、こうも納得できなかったのは、彼がその【青春】について府に落ちた後で、それを実践できなければならなかったのだ。  それでは確かに、空気を読むのが上手な理空が、最初に彼の問いに答えたとき、『あれ? 何か相手の空気が、満足したそれとは違うかな?』と、感じるはずである。  理空は、自分の洞察力のなさ、察しの悪さに、自分の未熟さを感じていた。  一方、空井正は彼女とはうってかわり、なんの動揺も見られない。最初と同じ姿勢で、流堂の目を見続けていた。  そして彼は、冷静な態度で指摘する。 「あのな、流堂。先ほど例えた『幼児時代に使っていた落書き帳』と【青春】。その二つの、一番の共通点は――――周囲の人に強制されて描くものではない、ということだ」  それを耳にした瞬間に、流堂は驚きに目を見開いた。  空井正はそのまま、話を進める。 「『幼児時代に使っていた落書き帳』は、友達と共に描くことはあれど、他の人によってのみで、描かれることはない。つまりは周囲になんと言われようとも、描くのは自分であり、また自主的にしか描かないものだ。だからこそ、描きたくない時には、描かなくても、白紙のまま次のページに移っても良い。その代わりに、描きたくなった時に、描きたいページに、描きたいものを好きなだけ描く。それが、『幼児時代の落書き帳』、だっただろ? 【青春】も、そんなものなんだよ」  流堂が、驚愕をあらわにした表情で呟く。 「……………………描かなくても、良い?」  その問いに力強く頷いて答えると、空井正は続けた。
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