~~ 9. 《続き》 ~~

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「描くのか描かないのか、周囲が何と言おうと、決めるのはお前だ。それに言っているだろ。余すところなく全て【青春】の中に含まれる、と。今は『描かない』とお前が言うのなら、それが、今のお前の【青春】だ。唯一の正解が存在しないのだから、それですら、【青春】なんだ」  余すことなく全てが【青春】に含ませるからこそ……、唯一の正解が存在しないからこそ………… ――――描かないことも、青春。  そんな考え方も、あったのか……  流堂は目から鱗の思いで、空井正が言ったことを反芻し、脳内で検討する。  空井正は、そんな彼を一瞥して、さらに言葉を重ねた。 「また、今思えば、『入院している愛しの彼女の看病をする』こと、それ自体が、既に【青春】である。【青春】の捉え方も人によって千差万別であり、唯一の正解が存在しない。そして、余すところなくまとめて【青春】の中に含まれる。とは前にも挙げたけれども、さらにその上、『恋愛』『片思い』が、既に今まで収集していた【青春】についての答えの中に含まれているのだから、それも充分に【青春】だと考案できるだろう」  新たな思案に、またもや意表をつかれ、二人は唖然とした表情で固まった。  それに対し、空井正は些細な変化もなく、何気ない様子で、話を進める。 「つまりはっきりと言うと、両親たちに、『彼女の看病』よりも自由な【青春】だ、と言われたようだけれども、そもそもその原点がおかしいということだ。他の人もそうだが、【青春】は自由だと言いながらも、固定観念に捕われ、『自由』という名の束縛をしてしまう。本来は、『彼女の看病』も【青春】のうちの一つなんだ。だから、元々『彼女の看病』と【青春】を天秤にかける必要はない。彼女の看病よりも【青春】を優先することも、『【青春】より『彼女の看病』を大事にすることもない。また、『入院している愛しの彼女、その看病をする』ことと【青春】の価値の差について考える必要もない」  それを聞いた理空は、彼が言いたいことを察し、心が温かくなるのを感じて、優しい笑みを浮かべた。  空井正はそのまま、口を開けて呆然としている流堂に向かって、話を投げかける。
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