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「流堂、先ほども言ったように、【青春】を描くのは自分であり、また自主的にしか描かないものだ。【青春】に見合う行動をするために、何をすれば良いのかわからない、と言っていたな。――――さぁ、どうする? 【青春】の一環として、『入院している愛しの彼女の看病をする』のか。それとも【青春】を描かない、と決めて、『入院している愛しの彼女の看病をする』のか。……まぁ、どちらにせよ、【青春】に違いはないのだけれどもな」
流堂はその投げかけを耳にし、真剣な表情で下を向いた。
今まで言われたことを思い出し、反芻して、熟考する。
そうして、何分ほどたっただろうか。
やがて、長い熟考の末に、彼は顔を上げた。そして彼は、二人の顔を交互に見詰める。
その顔からは、表情の陰りが消えていた。
「さぁ、どうする?」
そんな様子の流堂に、空井正が尋ねた。
流堂は、質問してきた相手を見つめると、スッキリしたような笑顔を見せる。
「ありがとう。二人に相談できて、本当によかった」
そうお礼を言って、流堂は後ろを振り返った。
そして、雲が晴れたように、意気揚々としながら、道の上を駆けていく。
おそらく彼は、そのまま入院しているという、彼女の元へと向かうつもりなのだろう。
そんな彼の背中は、沈みかけている夕日に照らされ、まさに青春を謳歌している少年のように、爛々と輝いていた。
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