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「うわっ、凄い現実的で夢のない答え!」  理空は、空井正の自論を聞いて、大きく動揺すると同時に、どこか納得していた。  彼の質問に対する答えに、少し腑に落ちた理空は、話が一段落終えたのを確認してから、押し入れの奥の奥にあった段ボール箱から、色鉛筆とクレヨンを取り出す。  そして、リビングテーブルの前に移動すると、落書き帳を広げた。  色鉛筆とクレヨンのふたを開けながら、ふと感じたように、理空は口にする。 「あれから、二日たったけれども、流堂くんは、どうなったんだろう?」  言ってから、後ろを振り向き、空井正の方に顔を向ける。  言葉を選び、ちゃんとした形で、理空は尋ねた。 「流堂くん、あれからどうなったと思う? あのあと、良い方向に展開は進んだのかなぁ?」  空井正は、立っているのが疲れたのか、リビングテーブルの横に敷いてある、元々彼が眠っていた布団に再び倒れ込んでいだ。  横になった状態で、理空の方に顔を向けながら、彼もポツリと返答する。 「さぁな、それはオレにもわからないことだ。だが、あのとき、悩みが晴れたような顔はしていた。それならば、もうあれほど悩むことに陥ることはないだろう」  理空は、上の方を向いて、虚空を見つめる。  そして感傷深く、微笑みながら呟いた。 「雨が降った後の空には、虹がよく掛かっているけれども。それみたいに、ひたすら悩んで、曇っていたはずの流堂くんの心にも、晴れてスッキリするような良いことが、訪れてくれたらいいのにね」  その意見に空井正も、寝転びながら、適当に頷いて、賛同の意を示す。  その様子を見て、理空は口を尖らせた。不満げな態度で、空井正に注意する。 「もう、ちゃんと真面目に聞いてよ!」 「あー、聞いてる聞いてる」  理空は、彼の簡易で適当な返答に憤慨した。  そんな様子とは裏腹に、空井正は、とろんと微睡んだ目をしながら、彼女に話しかける。 「そういえば、流堂(りゅうどう)くん? とかいう相談相手に、始めについて来ていた、銀(ぎん)田(た)くん? とかいう人と、小野(おの)さん? とかいう二人の、文字通りのバカップルがいただろ? その二人、昨日別れたようだぞ」  理空は、ある程度どうでも良さそうに応対した。
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