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「っ、謝られたって……!」
嬉しくないのよ、と言いたかったのに。
駄目だった。声が震えて、うまく出ない。
瞬きもできない。してしまえば、涙が溢れてしまいそうだから。
潤み切って滲む視界の中で、佐川は繰り返した。
「ああ。……悪かった」
彼の切ない表情に、心が壊れてしまいそう。
言葉が、見つからない。
佐川は欠片も、こちらを見ない。
それどころか、不必要なほど私から目を逸らしている。
ついには、くるりと背中を向けて私の腕を掴み、大通りまで引っ張られた。
何か言いたい。でも言えない。
こんな風に背を向けられるなんて、苦しくてたまらないのに。
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