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麗蝗(れいこう)市。昼下がりのメインストリート。
幾分交通量が少なくなった6車線の大通を、1台の
大型バイクが、今頃珍しいタイプのエンジン音を響か
せながら、ストリートを疾走していく。
はるか上空には、派手な企業広告入りのAFO(アド・
フライング・オブジェクト)が、金属光沢のボディを
煌めかせながら浮遊している。
眩い輝きは、真っ青なバイクを駆るライダーの、ヘル
メット越しの顔面に、狙いを定めたかのように差し込ん
だ……
キキキキーーーーッ、ドカーーーーン!!!
対向車線にはみ出したバイクが、小型乗用車ともろに
衝突した。
自動車のバンパーは曲がり、バイクに乗っていた少年は
盛大に弧を描き弾け飛び、ぐしゃりと嫌な音を立てて地面
に叩きつけられた。無論、即死に違いない。
合掌、チーン。
暫らくして誰かが通報したのであろう、救急車がやって
来た。
道の端っこに倒れている少年を担架に載せ、救急車に収
容すると、何処の病院に向かうのかサイレンを鳴らしなが
ら走り去って行った。
落ち着いたレンガ造りの洒落た建物、屋上の看板には
「九頭竜会・真船整形外医院」と書かれていた。
メインとなる診療科目は整形外科、心臓外科、消化器
内科、耳鼻科に眼科。
いわゆる総合病院という奴である。
そこの第3手術室で今、一人の人物があるオペを受けて
いる真っ最中だった。
「先生、クランケの心拍数が低下してきています。血圧
低下。このままでは、被験体の生体機能を維持出来ません!」
モニターを見ている若い技師が叫んだ。
「あ、そう。んじゃあ、バッテリーの電圧上げて。安定剤も
1本追加ね。ついでに筋力増加剤も投与してみようかな。
ボディの限界耐性値知りたいからね」
そう言ってメガネの男、どうやらこの手術の執刀医と
思われる者が…何とも面倒臭そうに、側にいる看護師に
指示を出した。
「薬剤投与して安定したら、いよいよ本日のメインディ
ッシュ、核反応炉をこの子の身体に入れるからねー」
一体何の手術をしているんだー、この医者は?!
「うふふふふ……もう直ぐだからねー。僕の可愛い再生
人間第1号君」
手術台に横たわっている患者の手に頬ずりをして、
彼は更に笑った。
メガネがきらりんと光る。
あぶねー。こいつマジあぶねー。
患者の体内へ、全身に接続された電極から高圧の電
流が流し込まれる。
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