第1話

3/10
前へ
/10ページ
次へ
 その後、一定の間隔でクランケの身体がぴくんぴく んと痙攣し始める。 「はあ、それにしても……第1オペ室担当の薺沢君の ところには無茶苦茶一杯予算が行くのに、何で僕の所 には来ないのかね?」  蛍光色の液体の入った注射器を見つめ、黒ぶちメガネ、 七三頭の中年医師が、歯ぎしりをしながら隣の看護師に 愚痴をこぼす。 「実戦では僕が作り出してきた改造体の方が、遥かに 役に立つと思うんだが?」 「コストの問題じゃないですか?」  別な女性看護師が答えた。 「あ?」 「この少年を改造体にする為のコストです。先生ご存知 無いんですか?」 「わしゃ知らん」 「義体改造化をするにはですね、手足が1本2千万。 人工骨格及び筋肉の形成に1億。体内の人工心臓、動力 反応炉は5億です。他にも制御系のAIや生体を維持する 為の機能的……」  看護師はマシンガンのごとく喋り続ける。 「私はお金については専門外だ。他を当たってくれ…考え たら猛烈に腹が立ってきた、くそ、こうなったらこの手術、 もう一つのプランも突っ込んでやる。MG2コントロール システムインサートだ」  そう言う問題なのか?  スタッフも手術内容もめちゃくちゃではあるが、《改造》 手術はそれなりに進んでいる様だった。 「被験体、反応安定しました。数値正常。いけます」 「おっしゃー。ではいよいよクライマックスに突入するぞー。 んじゃあ、取り敢えずペンチとはんだごて」  トンデモ医者のイカレタ手術。被験体、もとい患者の運命 は……?  天高く、雲雀さえずる夏の午後。  クリーム色の壁の室内にベッドが置かれ、一人の少年が 眠っていた。  窓は閉め切られていたが、エアコンが程良く効いており、 快適な療養環境が提供されている。  少年が眠りから目覚めようとしていた。 「う……ん、あれ?」  少年の名前は竜崎 光琉(りゅうざきひかる)。  意識を取り戻しゆっくりと開いた目に映った物は、 真っ白い天井と彼の周囲を取り巻くカーテンだった。  更に周囲を見回してみるとさまざまなモニターが並び、 そこから伸びたケーブルが、色とりどりの蛇のように彼 の身体に取り付けられていた。  他にも様々な液体の入った点滴セットが置かれ、これも またチューブが彼の身体に繋がれている。  いわゆるスパゲティだ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加