第1章お母さん病院へ行く

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お父さんは、お母さんに抗がん剤を受けることを懇願しました。 けれどもお母さんは、とても悩みました。 医者は、がん細胞はすべてとったと言ったのです。けれど、再発の可能性が何パーセントか残っていると言われたのです。 この時お母さんは、自分の姉に電話で泣きながら相談しました。 「お姉ちゃん、どうしよう手術でがん細胞は取れたって先生がいってたのに、再発していたらいけないから、予防的に抗がん剤療法を受けた方がいいって言われた。 お父さんにも受けてほしいって言われたよ。でも私しんどいよ。3回も受けるんだよ。いやや。でも死にたくないよ。どうしたらいいの。」 お母さんの声を聞いたお姉さんはどうしようもなく悲しくなりました。 あんなに小さな子供を置いて癌と闘っている妹が不憫でたまらなくなりました。 妹の顔は見えないけれど、泣き声と嗚咽から、妹の状態が想像できたのでした。 それはまるで妹がお姉さんの目の前で話しているようにお姉さんには思えたのです。 そして、妹の心がつたわってくるようにお姉さんの心の中も深い海の底に沈んでいくようでした。
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