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「ハナエ、私最近好きな人できたんだ。」
梅宮華絵(うめみや はなえ)。
大学2年。19歳。秋。
下校中。
一番の親友、一条百合(いちじょう ゆり)の突然の言葉。
でも、なんとなく予想はついていたんだ。
だって親友だもん。
「たぶんハナエも気づいてると思うけど。」
それは向こうも同じようだった。
「……タイキ君?」
「うん、あたり。」
ほらね。
ビンゴ。
ユリが最近名前を出すことの多い男子。
同じ学科の新堂泰輝(しんどう たいき)君。
彼はうちの学科でも目立つ、イケイケ系男子グループの一人。
多趣味多彩で交友関係も広く、気さくな人柄で男女問わず人気者だ。
そんな彼は、平凡キャラの私とは無関係と思っていたのだけど。
最近ユリの口から彼の名前がよく出るようになって急に意識し始めたところだった。
「まあ定番だけど、もし機会があったら協力してね~(笑)」
ユリの、少し照れたような言葉。
彼女からこんなことを頼まれるのは初めてで。
お互いなんとなく気恥ずかしい中、初めてのことに少しワクワクしていたのも事実。
青春だなあ、なんて言ってみたくなったり。
味気ない私の大学生活に、微かにほんのり色がついたようだった。
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