第一話

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私が通う大学の文化祭は、11月下旬にある。 他校よりちょっと遅めだ。 2年生の私たちは、学科ごとに劇を上演する。 私たちの学科は、実は大学内でも毎年目玉として注目されているだけあって、気合の入りもちょっと違うんじゃないかと、私は思っている。 「じゃあ、副代表は、一条さんてことで――拍手ー。」 うちの学科が文化祭に向けて動き出したのは、もう少し前のこと。 代表に立候補した男の子が、ユリを副代表に任命した。 理由は、ユリが去年の文化祭で、リーダー的立ち位置に付いていたから、だそうだけど。 副代表になったユリのおかげで、ほぼ日常を共にする私も、気分だけは文化祭モードにあっという間に引き込まれていくことになったのだった。 ちなみに私の役職は、音響。 ユリとは対照的に、私は裏方に立候補していた。 そうは言っても、代表やキャスト陣と違って音響は特に準備を急ぐ必要もなく、はじめのうちはこれといった仕事もしないまま、練習を見守ったりしていた。
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