第一話

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音響としての仕事は依然ないものの、いよいよ私も劇の準備に具体的に関わる時がやってきた。 それは、構内に飾る、宣伝用の垂れ幕作りだ。 デザインを考える子以外に、特に垂れ幕担当が決まっているわけでもなく、手の空いている人が適宜参加して、3メートルくらいある白い布に絵の具を塗っていく。 絵の具を使うため、作業は屋外のグラウンド横のスペースと決められている。季節は秋。結構寒い。 うちの学科の人数は多いので、実際人任せで作業に来ない人もいるはいるのだけれど、私は副代表ユリの友人ということもあり、積極的に参加する人員である。 みんなで頭を突き合わせてひとつの布を覗き込み、筆を持った手を交差させる。 「タイキ、ここはー?」 すぐ近くで、女子の声。 タイキ君がお得意のタブレットを使って、元のデザインを表示させながら、みんなに色を塗る場所を指示していた。
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