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「いやいやいや。ご苦労だったね、まさかキミが探してた“資料”を届けてくれるとは思ってもみなかったよ!」
そういって、俺が渡した不正の証拠を見つめて笑みを浮かべるターセルの顔はまるで子供のようだ。
ーー羽虫の羽をむしり取り、川へポイと放る。
必死にもがいて、戻ってきたらまた放る。
川魚に食われるのが先か、力尽きて沈むのが先か…
ワクワクしながら羽虫が死ぬまで繰り返す、そんな残酷なまでに無邪気な子供のようなーー
「ほんと“彼”にも困ったものだよ。まさか無断で協会の重要な資料を持ち出すなんてね、死人の事を悪く言うのも気が引けるけど、暴漢に襲われて命を落としたのも天罰ってやつかもしれないねぇ、ヒヒッ」
彼か…
きっとコイツは、ボブソンの名前すら知らないんだろうな。
「しかし、必死に探していたのにこの程度の内容だったとは、少し拍子抜けだね」
まぁ、そんな事はどうでもいい、俺はとにかく平穏無事にエリート生活を送りたいんだ。
「ああ、そうそうそう。キミにはちゃんとお礼をしないとね。何か要望はあるかい?」
「…でしたら」
…なのに。
「自分は猟鋭になったばかりなので、コネクションを持ちあわせておりません。できたらターセル局長のお側に置いて頂ければ、と…」
どうして証拠を隠蔽するなんて真似しちまったんだろうなぁ、クソっ!
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