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「ほぅ」
一瞬、分厚いレンズの向こうにある切れ長の眼が、恐ろしいくらいにギラリと光った。
「そうかいそうかい。確かにねぇー、地位を得たからには後ろ盾が欲しいってものだよね。うん、そんな事で良かったらお安い御用さ」
しかし、ターセルは驚くほどあっさりと了承した。
まぁ、きっと使えなかったら棄てるだけ…って事なんだろう。
クソッ!
これで完全に後に引けなくなった…
やっぱりやめときゃよかったぜ!
…なんて、今更後悔しても遅いよな…
ちくしょう…
俺がこんな無謀やらかすなんて、あいつ等のせいだ。
もし、あいつ等がこんな協会の闇を知ったりしたら、何も考えず正義のままに直談判するに決まってる、そんな事してみろ、ボブソンさんの二の舞だ!
だから…
やるしかないんだ。
ターセルに取り入るように見せかけて、秘密裏に証拠を集める。
例えば、不正の証拠に上がった人物の名前は常日頃から黒い噂が絶えないような“尻尾を掴み易い”迂闊(うかつ)な連中の名前だけ渡しておいて、他は懐にしまっておくような…
そんな狡猾(こうかつ)さを持つ、この俺が。
この日から…
俺とターセルとの化かし合いの幕が上るーー
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