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ミシミシという音が大きく響いてきたのは将にその直後だった。
ヤベェぞ…とうとう船が限界だ!
まだ荒波の治まり切らない内から海に飛び込むと、俺は必死に叫び続ける。
「爺さんっ!どこにいる!返事をしてくれ!」
ダメだ…ゼカードさんの捜索を試みようにも、波が高過ぎる!
いや、それ以前に俺の体がいうことをきかない。
このままじゃあ…
「…ぷはっ!」
沈みかけた俺の海から引っ張り上げてくれたのは、見慣れた三白眼の男だった。
「なんとか生きてるみたいだな」
「ゴホッゴホッ…!苦労かけます…」
小さな救命艇に引き上げられた俺は、舟の上から辺りを見渡した。
ダメだ…爺さんは疎か、海の上に見える人影は俺達以外に存在しない。
と…思っていた矢先に、あの緊張感のない底抜けに陽気な声が挙がった。
「おぉーい!今回は引き分けってことにしておいてやるズラ。しかぁし!噂に違わぬあの威力!俺っちはドラゴンブレスを諦めねーズラ!」
あの野郎っ!いつの間に舟なんか…
そういえば近くに舟を隠してるとか言ってやがったな。
…まぁ、どの道ヤツを捕縛する余力は俺達に残ってないか。
見る見る遠くなっていくピストリオの舟を、俺は力無く見つめるしかなかった。
ほんと、馬鹿な奴だな…
協会の直轄に置かれれば手出しなんて出来るわけないのに。
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