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「貴様っ…!自分が何をしたか分かっているのか!?」
激しい動揺を隠す余裕もなく、俺のコートの襟を掴んで鬼気迫る顔を近付けると、三白眼が赤く充血しているのが分かる。
「好きに評価してくれ」
「なっ…!」
胸倉を掴む腕を振り解き、救命艇の縁に凭れ掛かる俺を見て、船長は唖然としていた。
…いや、もう船長と呼ぶ必要もないだろう。
この男は、俺の試験官だったんだ。
ターセルが紹介した時から違和感があったが、船長と呼ぶには船の事を把握していない。
決定的なのはゼカードの屋敷にまで付いてきた事。
完全に船乗りの範疇を越えている。
「貴様はターセルを甘く見ている…必ず後悔することになるぞ…!」
ターセルを甘く見てる?
逆だ、ターセルがこの上なく危険な存在に思えるから、ドラゴンブレスは渡せないんだ。
それに…
後悔なんざ、とっくにし飽きてるさ。
波間に映る夕暮れの色は、俺の心を感傷的にさせる。
このまま夜がこなければいいのにーー
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