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「…あー、キミキミ」
必死に笑いを堪えながら、ターセルは俺の顔を指差した。
「名前、なんて言うんだっけ?」
よく言う、お前は俺の名前を聞いたことすらないだろうに。
「は!ロイドと申します。まだ若輩者でありますが、今後とも宜しくお願いします!」
歯切れ良く名乗を上げる俺に、ターセルは満足そうに何度も頷きながら近付いてくる。
「うんうんうん。ロイド、ロイド君ね」
そして耳元まで顔を近付けてくると、俺にしか聞こえない声で言うのだった。
『二度と忘れないよ?』
背筋がゾッとするような冷たい声。
俺は動揺しないように、或いは強がってみせるように、身震いを起こすまいと精一杯背筋を伸ばした。
「はい、それじゃ今日はご苦労さま。傷が治ったら直ぐにも復帰してもらうから、そのつもりでね」
それだけだ。
それだけで呆気なく話は終わった。
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