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それから…
それからは…まぁ、特に面白い話はない。
俺は妙にターセルに気に入られてしまったらしく、全快後には本当に忙しい毎日が待っているだけだ。
ターセルは殆ど外出をしないので、俺の仕事は専ら重要物資の護衛。
安全かつ機密を保守しながら、様々なものを運んだ。
役員の裏金…
麻薬の原料…
廃人同然になった被験体…
身寄りのない子供達…
協会に仇なす者…
等等々々などーーー
始めのうちはターセルの目を盗み、運ばれる荷の命を救おうと躍起になっていた。
だがそれも、全てを救えるわけではなかった。
俺が救えるのは、偶々タイミングが合った時だけ、極小数…
タイミングが合わなかった連中は、見殺しにするしかなかった…
そのうち、ターセルはわざと俺を泳がせているんだと気付いた。
俺が命の取捨選択に苦悩する様を見て、楽しんでいるんだ。
先日の森でも、多くの命が炎の呑まれて消えた。
俺には、難を逃れた数十人の女子供を船で運び、廃村に匿うくらいしか出来なかった。
いつからだったか…
助けを乞いながら目の前で死に逝く者を、目を逸らさず見れるようになったのはーー
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