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初めて顔合わせをした時、彼は大層怪訝な顔をしていた。
「どうも、竜鱗商会代表のフィリップです」
本来であれば雲の上の人物。
いかに猟鋭といえど、おいそれと面会の叶う相手ではない。
しかしそこは、敢えてターセルの名を使うことで呆気なくこうして対峙することが出来た。
さて…この反応を見るに、事前に聞いていた噂通りターセルとは浅からぬ因縁がありそうだ。
どうせこれ以上になく警戒されているんだ、つまらんおべっか使ってご機嫌伺いを立てるより本題に入った方が早いだろう。
「急なお呼び立てして申し訳ありません。実は、ターセルの使いでやってきたというのは嘘です」
フィリップさんは、俺の言動であからさまに眉間の皺を深めた。
だが、別段帰れと言う様子も無く、取り敢えずの形で席に着く。
やはり、あいつが言っていた通りだ。
物事を冷静かつ大局的に見極められる…それがあいつの話から思い浮かんだ人物像だった。
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