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俺は、ターセルのこれまでの悪事と、これから予定している対抗策に、どうしても技術者の助力が必要だといった話を包み隠さず喋った。
俺が手を下した悪事も、決して少なくないという事も合わせて…
これは今から協力を仰ぐ相手にマイナスの情報にしかならないと分かってはいるが、全てを開け広げにすることで裏が無いことを知って貰いたかった。
…いや、違うな。
俺はただ、誰かに聞いて欲しかったんだ。
知ってもらって、懺悔したかっただけ…
そして、脆弱な自分はここに置いていかなければならない。
「--なるほどね、話は分かったよ」
1つ大きな息を吐くと、フィリップさんの眉間に寄った皺はきれいに消えていた。
「でも、悪いけど僕は協力出来そうにない」
…まぁ、そうだよな。
ターセルは協会の裏を牛耳る相手…狩猟協会と提携関係にある竜鱗商会の代表者が、たった一人の反抗勢力に力を貸すメリットなどどこにも無い…分かっていたことだ。
「…貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。ここでの話はどうかご内密に--」
「ん?あぁ、ゴメン。勘違いさせちゃう言い方だったかな」
席を立とうとすると、フィリップさんはそう言って朗らかに笑った。
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