718人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕って結構いい加減に見られる事が多くてね。まぁ、否定できるほど真摯な人間でもないんだけど--」
冗談を交えながらも、フィリップさんの表情は真剣そのもの。
それなりの修羅場を潜り抜けてきた俺でも、気圧されるほどの強い情念を感じる。
「…けどね。僕はいち商売人として、矜持を持って仕事をしている。武器が欲しいと言われれば最適な物を見繕い、薬草が不足しているならどんな山奥だって適正価格で届けよう」
商人の鏡だな。
…なるほど、何が言いたいか大体わかってきた。
「だからね、誇りの欠片も無いゴルテアのやり方を認めるわけにはいかない。粗悪品や害を齎すと知って物を売りつける連中を、僕は同じ商人として許せない」
「つまり、交換条件にゴルテア陸商を潰せ、という事ですね」
俺がはっきりそう言うと、フィリップさんは悪戯っぽく笑ってみせた。
「そこまでは言わないけど、内部から悪事が露顕したりしないかなーってね」
ふっこの人もひとが悪い。
ゴルテア陸商の実権を握っているのがターセルだと知って言ってるな?
つまりそれは、ターセル打倒とゴルテアの解体がイコールじゃないか。
だがこれで、俺とフィリップさんの利害は一致した。
認めて貰った紹介状を手に、強力な後ろ盾を得た当時の俺は、久々に軽やかな足取りで【エリエ】に向かったのだった--
最初のコメントを投稿しよう!