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港町特有の匂い…磯の香り。
砂漠育ちの俺がこの匂いをどこか懐かしく感じるのは、あいつ等と別れたのがこういった港町だったからだろうか。
新人の猟徒時代…腕も経験も、今とは比べ物にならないくらい程度の低いものだたが、だからこそ足りない部分を補い合い、互いに切磋琢磨してこれた。
何よりも、あの頃は夢と希望に満ちていた…
あの時が、俺にとって最も輝かしい思い出になるのだろう…きっと、この先も。
『ロイド!』
波止場に向かう俺の足が止まる。
どうして…記憶の中の声が聞こえる…
なんでこんな所にお前がいるんだ!
…駄目だ、お前は俺にとって決して切れないワイルドカード。
こんな不特定多数の前で関係を知られるわけにはいかない…
凍らせるんだ、感情を。
俺達が仲間だった事実は、思い出の中にしかない。
戻れないんだよ、もう--
「ロイド…だろ?」
覚悟が決まったからか、揺れる稲穂のような黄金色の髪も、何一つ変わらない真っ直ぐな橙の瞳も、俺の眼には無感動に映る。
「リーンか」
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