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 まだまだ幼い姪に心配ばかりさせている自分を不甲斐なく感じた。せめて彩未に対してだけでも今まで通りの自分でいられたならどれほど良かったか。 「いっちゃん、寒いからおうちに入ろう?ねっ」  ニット帽の上から僕の頭をポンポンと撫でながら彩未が言う。こんなにも寒い夜、どれだけの時間この子を外で過ごさせてしまったのだろう。そう思いスマートフォンで時間を確認すると、もう七時半を過ぎていた。 「はい、立って」と僕に手を差し伸べる彩未に促されるまま僕が立ち上がると、彩未は満足げな表情で「はい、おうち帰るよ」と言って背中を向けた。  僕の前をパタパタと音を立てて歩く、ぼんぼりの付いた毛糸の白い帽子を被り赤い色をしたコートに白いタイツとベージュ色のブーツを履いた彩未は、時折振り返っては僕の様子を確認する。相変わらず鼻の頭と頬っぺたを赤くして、何度かに一度は鼻をすすっていたけれど、四才児の小さな背中は何だか頼もしくあった。  三階に上がる階段の途中で、僕のスマートフォンから通知音が鳴った。妹からのメールだった。 『もしかして彩未いっちゃんち行ってる?』  読んでハッとした。こんな時間だというのに彩未が一人でいたという事に僕は今の今まで気にもせずにいたのだ。
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