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「あっ!」三階に着くなり、何かを思い出したかのように大きな声を出した彩未が僕の部屋のほうに向かって廊下を走り出す。そちらに視線を向けるとちょうど僕の部屋の真ん前辺りに小さな箱のようなものがあるのが見えた。  彩未はそれを手に取るとまた僕のところに駆けてきて、足元にしゃがみこんだ。 「これ、いっちゃんに持ってきた」 「えーっとねぇ」と、僕に笑顔を向けながら、彩未がその小さな箱を開ける。中に入っているのは小さめのチーズケーキだった。 「いっちゃんはぁ、イチゴのショートケーキも嫌いだしチョコレートのケーキも嫌いでしょ?だからチーズのケーキにした。彩未のお小遣いでかったんだよ。クリスマスだから」  そう言って、彩未はその箱ごと僕にケーキを差し出した。  僕がそれを受け取ると、「それからねぇ……」と言いながら彩未は赤い色をしたコートのポケットの中をゴソゴソと探る。そうして取り出したのは無造作にビニールのようなもので包まれた小さななにか。 「母ちゃんが言ってた。いっちゃんはみんなに優しくし過ぎるから疲れちゃったんだって。だから今はみんなから優しくしてもらう順番なんだって」  なにかを包んでいるものはビニールではなくラップのようだった。彩未はそう言いながら不器用な手つきでラップをグルグルと捲っていく。グルグル巻きのラップの中から現れたのは小さなサンタクロースだった。
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