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 ありがとう──こんな僕のことを一生懸命に考えてくれている幼い姪に対して、僕はその一言すら口にできないでいた。  僕は今、どんな顔をしているのだろうか。彩未に笑顔を向けられているのだろうか。頬に涙が伝うことは感じていた。けっしてそれは怖いからでも辛いからでもない。  両手に受け取ったケーキの箱を持ったまま、足に抱きつく彩未を見つめる。僕の太ももに頬をすり寄せる彩未の頭の上で白いぼんぼりが右に左にと揺れている。  しばらくそうしていると、不意にこちらを見上げた彩未と目が合った。 「いっちゃん、泣きながら笑ってるぅ」  僕の足にしがみついたままで、彩未はぴょんぴょんと跳ねた。  どうやら、僕はちゃんと笑えていたみたいだ。
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