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「いい子にしてないとサンタさんは来てくれないよ」  僕の幼い頃、母親はクリスマスが近づくと決まってそう言って、僕と妹に勉強や家事の手伝いをするようにと強いた。けれど、どれだけ母の要求に応えてもクリスマスプレゼントを貰えたことはなかった。クリスマスなんて自分には関係ないものだと、幼い頃の僕はずっとそう思っていた。  今年の僕はいい子だったんだろうか。そんなはずがないことはわかっているけれども、それでも僕の元にはサンタクロースがやってきた。砂糖菓子の甘い香りのする小さな小さなサンタクロース。  彩未たちはもう家に着いているのだろうか。そんなことを思いながら、いつもは閉め切っていたカーテンを開けて窓の外に目をやる。雪が降り始めていた。残念ながら積もりそうではないけれど、彩未がこの雪に気付いていたらいいのに──と、そんな事を考えながら、僕はその雪をしばらく眺めていた。           おわり
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