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会社からの最寄りの駅までは、その途中にある繁華街を通り抜けて行くのが一番の近道だったけど、僕はいつも、あえてそうはしない。少し遠回りにはなっても人通りの少ない裏道を選ぶ。
どういったテナントが入っているのかわからない雑居ビルやシャッターが閉められたままの店舗ばかりのその通りにはぽつりぽつりと小さな看板の灯りがあるだけで、クリスマスイブでにぎわう繁華街とはうって変わってガランとしていた。
周りに人がいないというだけで僕はホッとする。
職場では、僕がこんな状態になってから、書類の作成やパソコンへのデータ入力などといったなるべく他人と接することのない業務に変更してもらっているけれど、それでも人との関わりはゼロにはならない。
もともと営業職だった僕の携帯電話には業務が変わった後にも得意先や取引先からの着信があるし、事務所でもたまにではあるけど書類やデータの変更なんかで口頭でのやり取りがある。
通勤途中のティッシュ配りや帰宅途中のカラオケなんかの呼び込み、買い物に行った先のレジ打ちの店員。そういった、ほんの少し僕に視線を向けてくる人たちに対しても僕の心は敏感になっていた。
本当は仕事なんて辞めて部屋に引きこもってしまいたかったけど、一人暮らしをしている僕には叶わないことだ。
ぴゅうと吹く、強くて冷たい冬の風に僕は体を縮める。
早く帰って一人になりたい。
僕にはクリスマスなんて関係ないんだから。
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