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 狭くて暗い路地をしばらく歩く。この道を通行する人は本当に少なくて、十数分歩いてもすれ違うのはほんの二、三人程度だけど、それでも僕は彼らの視線に怯えながら俯いて歩く。  今ではこんなに寂しくなってしまったところだけれど、十年くらい前までは活気に満ちた商店街だったと、以前に誰かから聞いた。  いっそのこと、僕もこの道のようにみんなから忘れられてしまえば楽になれるのに。  そんなことを考えているうちに、俯いたままでもわかるほど辺りが明るくなる。駅前の大きな通りだ。  もうひと月以上も前から街路樹や通りに並ぶ店舗を色さまざまなキラキラとしたイルミネーションやクリスマスをモチーフとした装飾品で飾りつけ今日という日を待ちかまえていた街には、人が溢れかえっていた。  ひとつ小さく息を吐き出して、僕はその人の波に紛れ込む。  ニット帽をさらに深く被り直し、ポケットの中のスマートフォンの側面にあるボタンを何度か軽く指で押して、イヤホンから流れる音楽のボリュームを上げる。  そうしてから自分に言い聞かせる。  大丈夫。僕のことなんて誰も見ていない。周りには誰もいない。ここには僕しかいないのだからと。
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