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 駅前のコンビニエンスストアで弁当と飲み物とタバコを買ってからうちへと向かった。  ここ数年の間でずいぶんと廃れてしまった商店街を通り抜けて緩やかだけど長い坂道を上ると、僕が住んでいるマンションが見える。  周りには市立の中学校以外にこれといった大きな建築物はなく、同じような外観をした建て売りの一軒家が並ぶ住宅地の一角の小さな賃貸のワンルームマンション。中学を卒業した僕が、保護者代わりである祖母のうちからそれほど離れていないことや高校に通ううえでも不便ではないことを条件に選んだ物件だ。  今となっては狭く感じるけれど、畳で言えば八畳ほどのクッションフロアの部屋にキッチンとユニットバス、それに備え付けのクローゼットのあるおそらくは一般的なワンルームの部屋は、高校生の頃の僕にとってはまさに自分の城だった。  当時、僕の周りの同じ年頃の知り合いには一人暮らしをしている者はいなかったし、親から干渉されずに自由に生活している者もほとんどいなかったものだから友人たちからは羨ましがられ、一時期は悪友たちの溜まり場のようになっていたが、今では皆それぞれの城を手に入れ、あの頃のように集まることは少なくなった。  坂を上り終えたところで、なんとなく自分の部屋のドアのある辺りに目をやった。道路に面した廊下の三階の真ん中近く。本当に意味もなくただなんとなく見ただけだったのに、そこにはこちらに向かって手を振る人影があった。  ドクン、と心臓が大きな音を立てて鳴る。
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