第1章

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  会場に入ったら、おばあ様に紹介されて… その後、そのまま華を生けて…。 そして、今は会場の隅っこで休憩中です…。 僕が、こういう場で前に出るのが苦手なことを理解してくれているおばあ様。 だから、華を生け終わったら…こうやって、ソッと端に捌けさせてくれる。 母さんも、おばあ様も、僕を気遣ってくれる…優しい自慢の家族です。 「……母さん、僕ちょっとお手洗いに行ってくるね」 「あら、行ってらっしゃい。 なんだったら、ついでに外の空気を吸いに行って来ても良いわよ?疲れたでしょう?」 「うん、有り難う。 じゃあ…ちょっとゆったりしたいし、少し外の空気も吸ってくるね」 気遣ってくれる母さんに感謝しつつ、 ハンカチとスマホと財布をちゃんと持ったことを確認して、トイレへ立った。 会場である旅館内をゆっくり歩いてトイレに着くと用を済ませ、手を拭くのに使ったハンカチをしまいながら、さてこれからどうしようかなと考えながら宛てどなく歩く。 と、ロビーに着いたので立ち止まる。 ソファーにでも座ろうかな、と考えた思考は、だけど直ぐ様却下された。 丸々空いているソファーはなくて…座るなら、見知らぬ人と相席することになっちゃう…。 それは、チキンな僕には少しハードルの高い部類に入ってしまうので、直ぐにソファーからは視線を外した。 そんな僕の目に次に移ったのは、入り口だった。  
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