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「別に大したことはないわ。もう朝なのだし朝食を摂ったらどう?」
「……じゃあ、そうさせて頂きます」
本当に大したことではない用件になかば呆れながらも暁は確かに腹が空く頃合いだと思い彼女と一緒に部屋を出ていった。
正直、あの白い世界から抜け出せるならなんでもよかった、というのが本音なのだが。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
朝の食堂はいつだって騒がしい。しかし、今日のそれはいつも以上だった。
暁はツナサンドを口に運びながらいつもと様子の異なるそれらを眺めながら何事だろうかと首を傾げた。
「だから! そんな」
「おれにだって権利は」
「どうせ性質の悪いデマ」
「勝手にしろ!」
「くどい! いいから離せ!」
「バカげてる! 頭でも狂ったか!?」
「今までの苦労が水の泡だ!」「ここならきっと」
いつの日も研究やら論文の発表やらで慌ただしい食堂だが、やはり耳に入ってくる騒ぎは何かがおかしい。なんというか、嫌な予感がする。
「あの、鼎さん」
「なにかしら? あっ、プリンはあげないわよ? あたし、これだけが楽しみなんだから」
「いやそうじゃなくて」
「じゃあ何かしら?」
暁に話しかけられ、芝居がかった動きでプリンを手元に寄せる鼎に眉をしかめながらも彼は何やら騒がしい研究員達にそれとなく視線を寄越しながら
「なんだか、いつもより騒がしくないですか? こう、騒がしさの種類が違うっていうか」
「あぁ、そんなこと。そりゃ地球最後の日だもの、当然でしょう?」
「地球最後の日ですか。――えぇっ!?」
一瞬受け流しそうになった暁が派手に椅子から転げ落ちる。それを「あら?」と不思議そうに見下ろしてくる鼎は自分の言ったことを理解しているのだろうか。
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