第2章

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数日分に匹敵する話を数時間で話し終えた少年は、少女に問うた。 「君の名前はなんていうの?」 少女は固まってしまった。 答えることができなかった。 少女はその質問の答えを知らなかった。 そして、てっきり 少年は知っているのだと思っていたから。 少女は口を固く結び うつむいてしまった。 ……わからない。 ずっと使っていなかった言葉を ずっと使う必要のなかった言葉を 少女は紡いだ。 少年は顔色を少しも変えなかった。 それきり、ふたりは 黙りこくってしまった。 沈黙に耐え切れず 少女が口を開いた。 今まで、どこにいたの。 なぜ、会いに来なかったの。 私のことが 嫌いになってしまったの。 少年は答えなかった。 ただにこやかに 微笑んでいるだけだった。 問いたいことは山ほどあった。 だけど のどにつっかかって 言葉になることはなかった。
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