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何度、同じ話を聞いただろう。
少女は
少年の話を一言一句間違えずに
暗唱することができるくらいに
何度も繰り返した。
時折、少年が少女に体を預けて
眠ることもあった。
実体は無いけれど
あたたかさは多少感じることができた。
少女はもう、目を閉じなかった。
閉じる必要がなくなったから。
ずっと少年を見ていたかった。
ずっと少年の声を聞いていたかった。
自分の目は、そのためにあるのだと。
自分の耳は、そのためにあるのだと。
数日経って、少年が言った。
それは初めて聞く話だった。
淡々と、誰かの物語を語っている。
それが誰の物語なのか、少女には心当たりがあった。
紛れもない、少女の物語だ。
少女は静かに少女自身の物語を聞いていた。
自分でも、自分の歩んだ道を忘れてしまう程に
時間が経っていた。
しかし、少年は語ることができなかった。
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