第2章

7/8
前へ
/20ページ
次へ
何度、同じ話を聞いただろう。 少女は 少年の話を一言一句間違えずに 暗唱することができるくらいに 何度も繰り返した。 時折、少年が少女に体を預けて 眠ることもあった。 実体は無いけれど あたたかさは多少感じることができた。 少女はもう、目を閉じなかった。 閉じる必要がなくなったから。 ずっと少年を見ていたかった。 ずっと少年の声を聞いていたかった。 自分の目は、そのためにあるのだと。 自分の耳は、そのためにあるのだと。 数日経って、少年が言った。 それは初めて聞く話だった。 淡々と、誰かの物語を語っている。 それが誰の物語なのか、少女には心当たりがあった。 紛れもない、少女の物語だ。 少女は静かに少女自身の物語を聞いていた。 自分でも、自分の歩んだ道を忘れてしまう程に 時間が経っていた。 しかし、少年は語ることができなかった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加