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少女がひとり
ただぼうっと虚空を見つめていると
少年がひとり
そうっと少女の側に寄ってきた。
「やあ」
少年は言った。
少女はゆっくりと少年を見据え、首をかしげた。
少年は一言も話そうとしない少女の隣に腰を下ろした。
「やあ」
少年はもう一度そう言った。
「…やあ」
少女は少年を真似て言った。
少年はゆっくりと話し始めた。
少年はなんでも知っていた。
少女の住むこの場所のこと
変わりゆく空のこと
いつかほろびた時間のこと
少女に何もかもを教えた。
少女は何も言わず、じっと聞き入っていた。
なにも知らないことに慣れていた少女は、多大な量の情報に戸惑い、興味を示した。
少女は少年に教えてもらったことを全て記憶した。
その情報を誰かに教えるでもなく、ただ記憶し続けた。
少女はあるとき、少女自身の名前はなんというのか、少年に問うた。
少年は答えなかった。
何も 言わなかった。
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